【薬剤師監修】閉経前後の不正出血や体調変化の原因は?周閉経期に起こる女性ホルモンの乱れと対処法

「最近、月経の間隔が不規則になってきた」「閉経が近いのかなと思っていたら、突然出血があった」──そんな経験をして不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、世界的に注目されている「周閉経期(しゅうへいけいき)」という考え方をもとに、女性の体に起こる変化をわかりやすく解説します。
従来の「更年期」との違いや、閉経前後に起こる不正出血の原因、ホルモンバランスの乱れがもたらす体調の波、そしてホルモン補充療法(HRT)の役割まで、薬剤師の視点で丁寧にご紹介。自分の体の変化を正しく理解し、安心してこの時期を過ごすためのヒントをお伝えします。
「更年期」から「周閉経期」へ──世界で広がる新しい考え方

これまで「更年期」という言葉が一般的でしたが、近年では世界的に「周閉経期(しゅうへいけいき)」という表現が主流になりつつあります。
周閉経期とは、閉経(月経が永久に停止すること)を挟んだ前後約5年ずつ、合計10年の期間を指します。名称が変わっても、女性ホルモン(エストロゲン)の大きな揺らぎによって体と心に様々な変化が起こる時期であることに変わりはありません。
閉経前後の不正出血:「もうそろそろ終わるはず」なのに続く出血の原因とは

閉経が近づくと、「月経の間隔が不規則になってきた」「そろそろ終わるのかな」と感じる方が多いですが、そんな時に突然の出血が起こることがあります。
突然の出血は、誰にとっても大きな不安を伴うものです。特に、予期せぬタイミングで、しかも多めの不正出血があると、「もしかして悪い病気では?」と、がんなどの深刻な疾患を思い浮かべてしまい、強い恐怖を感じることも少なくありません。
【知っておいてほしいこと】
- 出血があった場合は、必ず婦人科を受診しましょう。
悪性腫瘍などの病気が原因のこともあるため、自己判断せず、専門医に原因を調べてもらうことが大切です。 - ただし、こうした出血の多くは、周閉経期におけるホルモンバランスの乱れ(乱高下)によって起こることも少なくありません。
この事実を知っておくだけでも、「もしもの時」に過度に不安を抱えずに済むかもしれません。
不安を一人で抱え込まず、まずは信頼できる婦人科に相談してみましょう。
女性ホルモンの乱れは「ジェットコースター」──体調が安定しない理由

周閉経期は、卵巣の働きがゆるやかに低下することで、女性ホルモン(主にエストロゲン)の分泌量が一定ではなくなります。このホルモンの揺らぎには、卵巣が脳からの指令(FSHというホルモン)をうまく受け取れなくなってくることなどが関係しています。その結果、エストロゲンの分泌量は日によって大きく変動し、低下する日もあれば、逆に平時より高くなる日も出てきます。
こうしたホルモンの「乱高下」によって「体調がとても良い日」と「つらい日」とのギャップが生まれやすくなるのです。このギャップをできるだけ小さくし、なるべくホルモンバランスを安定させるために行われるのが、ホルモン補充療法(HRT)です。HRTは、単に「減ってきたホルモンを補う」というよりも、日々変動するホルモン量の差を埋め、心身の状態を整えるための治療法として位置づけられています。
月経量や周期の変化も、ホルモンバランスの乱れのサイン
月経の量や周期の変化も、女性ホルモンの大きな揺らぎが関係しています。
【月経量が多いと感じたら】
一般的に「月経量が多い」とは、140mL以上とされますが、実際に自分で正確に測るのは難しいものです。そのため、以下のような生活に支障をきたすサインがあれば、過多月経の可能性があります。
- 出血量が多くて外出が不安になる
- 昼間でも夜用ナプキンを使用する
- 頻繁(2時間以内など)にナプキンを交換しなければならない
- レバー状の血の塊が混ざる
また、月経周期が24日以内(頻発月経)または39日以上(希発月経)といった変化も、ホルモンバランスの乱れを示すサインです。
周閉経期を穏やかに過ごすために──「受援力(じゅえんりょく)」を育てる

日本人女性は、他者を支える「与援力」は高いとされている一方で、人に頼る「受援力」が低いと言われています。しかし、周閉経期を健やかに乗り越えるには、人の助けを受け入れることも大切です。家族や友人、専門家とのつながりは、心身の安定に大きく影響します。
体や心に変化を感じたら、一人で抱え込まず、婦人科や薬剤師に相談しましょう。私たち薬剤師も、皆さんの身近な健康の専門家です。お薬のことだけでなく、体調の変化や受診の悩みなども、お気軽にご相談ください。
まとめ|周閉経期を理解して、前向きに付き合おう

「更年期」は世界的に「周閉経期」と呼ばれ始めています。閉経前後の不正出血は必ず婦人科を受診し、ホルモンの乱れによる体調の波にはHRT(ホルモン補充療法)が有効な場合もあります。
そして何より、周囲に頼る「受援力」を持つことが、心と体の健康を支えるカギです。周閉経期は、不安な時期ではなく「自分の体と向き合う大切な10年間」。正しい知識と支え合いで、前向きに過ごしていきましょう。


