生理日は移動できます|大切な日に備える「月経移動」という選択肢

実は、生理(月経)のサイクルは、医師の指示のもとでお薬を使ってコントロールできます。
「大事な日に生理が重なりそうで不安…」と感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

月経の時期は、ライフイベントに合わせて調整することが可能です。
薬剤師として多くの相談を受ける中で、特に受験シーズンが近づく12月頃には「生理が動かせることを、もっと早く知りたかった」という切実な声を耳にします。

冬は、受験や資格試験など人生に影響する大切な予定が重なる時期です。
「生理を動かしてもいい」という選択肢を知るだけでも、心と体の準備はずっと楽になります。

なお、月経移動は病気の治療ではないため、医療保険の適応外となることに注意が必要です。

なぜ「月経移動」を考える必要があるのか

月経は自然な身体の働きですが、タイミングによっては日常生活や大切な場面に大きな影響を与えることがあります。
身体的な不調だけでなく、心理的な負担につながることも少なくありません。

ここでは、月経の基本と、なぜ月経移動が選択肢となり得るのかを整理します。

月経とはどのようなものか

月経とは、「約1ヶ月の間隔で自発的に起こり、限られた日数で自然に止まる子宮内膜からの周期的出血」を指します。
出血は数日間続き、自然に止まるのが一般的ですが、痛みや体調不良を伴う場合もあります。

多くの女性にとって身近なものですが、その症状や影響の程度には個人差があり、軽い不調で済む方もいれば、仕事や学業に支障をきたす方もいます。
そのため、月経は単なる定期的な出血ではなく、生活の質に関わる重要な要素といえます。

身体的な負担だけでなく心理的影響も

大切な日に出血や痛み、体調不良があると、どうしても集中力やパフォーマンスが低下しやすくなります。
加えて、次のような心理的な不安も生じます。

  • 試験中に痛みや体調不良で集中が切れないか
  • 限られた休憩時間内に混雑するトイレへ行き、ナプキンを交換する時間が取れるか
  • 結婚式で真っ白なドレスを汚してしまわないか

こうした不安を抱えたまま当日を迎えるよりも、事前に月経周期の調整を検討することで安心感を得られる場合があります。

環境を整えるという考え方

月経移動は、月経そのものを否定するものではありません。
大切な日に自分の力を発揮しやすい環境を整えるための手段の一つです。
事前に準備することで、身体的・心理的な負担を軽減し、落ち着いて予定に臨める可能性があります。

医学的な理由で「動かす」場合もあります

月経移動は、イベントや旅行のためだけに行われるものではありません。
医療現場では、体調管理や治療計画の一環として行われることもあります。
ここでは、医学的な理由で月経移動が検討される代表的なケースを紹介します。

たとえば、医学的な理由で月経移動が検討されるのが、手術を控えている場合です。
月経と手術時期が重なることで、出血量の増加や体調管理が難しくなる可能性があるため、事前に調整が行われることがあります。

入院から退院、社会復帰までの期間(周術期)に月経が重なると、貧血や体力低下につながることがあります。
そのため、主治医の判断のもとで月経の時期を調整し、身体への負担を軽減することがあります。
これは安全に治療を進めるための一つの方法です。

ただし、「産婦人科診療ガイドライン」では、手術目的の月経移動は「1周期前」から調整が推奨されています。
これは、手術直前のホルモン剤使用は、血栓症(血の固まりができる病気)のリスクが高まる可能性があるためです。

このように、安全性を考慮すると早めの相談が重要になります。

生理が不規則でも月経移動は可能です

「生理が不規則だから、月経移動はできない」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。
生理周期の状態に応じた方法があり、状況によっては調整できる場合があります。

規則性に関わらず対応できる

生理周期が安定している方だけでなく、不規則な方にも対応した月経移動の方法があります。
また、「当日に生理が来るかどうかわからない」という不安な状態でも、余裕を持って受診すれば調整が可能なケースもあるんです。

治療中でも調整できる場合

すでに低用量ピル(LEP製剤)などで月経困難症の治療を行っている方も、服用方法を変えることで月経のタイミングを調整できる場合があります。
ただし、自己判断は避け、必ず医師の指示を受けることが大切です。

まずは避けたい日を整理する

月経移動を検討する際は、「いつ生理を避けたいのか」を明確にすることが重要です。
そのうえで、早めに医師へ相談することで、より負担の少ない方法を選択できる可能性があります。

月経移動は相談のタイミングが重要です

月経を動かすには、始める時期によって選べる方法や使用する薬剤が変わります。
そのため、相談のタイミングによって選択肢が大きく変わります。

「避けたい日より前に月経を起こす方法」と「避けたい日が過ぎてから月経を起こす方法」があります。
どちらを選ぶかは、現在の周期や予定日によって異なります。

直前に相談すると、選択肢が限られ、ホルモン量の多い薬が必要になる場合があります。
その結果、副作用が出やすくなる可能性があります。

早めに相談することで、余裕を持って月経移動を行えることから、ホルモン量が少ないお薬を使える可能性があり、副作用である吐き気や頭痛のリスクを抑えられる場合があります。
ただし、お薬の種類によっては血栓症のリスクがゼロではないため、正しい説明を受けたうえで使用することが重要です。

特に、以下のイベントを控えている方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

避けたいイベントの例:
受験、各種試験、発表会、試合、ライブ、結婚式、旅行、出張など

まとめ:生理をもっと自分らしくコントロールするために

不安なままイベント当日を迎えるのは、心身ともにストレスがかかります。
月経移動は、無理をするための方法ではなく、不安を減らし自分らしく過ごすための選択肢の一つです。
正しい知識を持つことで、必要以上に我慢することなく判断できます。

「この日に生理が重なったら困る」と感じた時点で、まずは早めに婦人科を受診してみてください。
また、受診する前に不安や疑問点がある場合は、薬剤師にぜひお気軽にご相談ください。
専門家の助言を受けながら、自分に合った方法を選びましょう。

▼参考文献
女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編 2016年度版
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023