【薬剤師が解説】生理が来ない…放っておいて大丈夫?無月経で気を付けたい病気と体の変化

「最近、生理が来ていないけれど大丈夫かな…」
「生理がない方が楽だし、そのままでも問題ないのでは?」
そんなふうに思ったことはありませんか?
生理が来ない状態は、一時的な体調の変化によることもありますが、なかには治療が必要な病気や、将来の健康に影響するサインが隠れていることもあります。
薬局でも、
「生理が数か月来ていない」
「飲んでいる薬が影響しているのでしょうか?」
といったご相談をいただくことがあります。
今回は、生理が来ない状態である 「無月経(むげっけい)」について、原因や体への影響、受診の目安を薬剤師の視点から解説します。
生理が来ないとき、まず確認したいのは妊娠の可能性です

生理が来ないとき、まず最初に確認しなければならないのが「妊娠の可能性」です。
- いつもより出血量が少ない
- 数日で終わった
- いつもと様子が違う
という場合は、実際には生理ではなく妊娠初期の出血である可能性があります。
「少し出血したから大丈夫」と自己判断せず、妊娠の可能性がある場合は妊娠検査薬の使用や婦人科受診を検討しましょう。
生理が来ない状態は「無月経」かもしれません
これまであった生理が3か月以上来ていない場合は、「無月経」の可能性があります。
生理の周期には個人差がありますが、一般的 には以下のように分類されています。
- 無月経: 生理が90日(3か月)以上停止した状態
- 頻発(ひんぱつ)月経: 生理周期が24日以内と短い状態
- 希発(きはつ)月経: 生理周期が39日以上と長い状態
「最近、生理の間隔が長くなっている」
「最後に生理が来たのがいつだったか分からない」
という方は、一度月経管理アプリや手帳などで確認してみましょう。
無月経が起こる原因は?
無月経の原因は、妊娠だけでなく、ストレスや生活習慣、お薬の影響、婦人科疾患などさまざまです。
- 生理的なもの: 妊娠
- 生活環境やストレス: 大幅な体重減少、精神的ストレス、激しい運動負荷など
- お薬の影響(薬剤性無月経): 精神科のお薬や消化器系のお薬などにより、「プロラクチン」というホルモンが上昇して起こるもの、抗がん剤の影響など
- 病気や過去の影響: PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、手術や処置による子宮内の癒着、分娩時の多量出血による脳(下垂体機能)への影響など
⚠️ お薬を飲んでいる方へのお願い
もし「新しいお薬を飲み始めてから、月経の間隔が不規則になった」「止まってしまった」という場合は、お薬の影響が関係している可能性があります。
ただし、自己判断でお薬を中止すると、治療中の病気が悪化したり、症状が再び現れたりすることがあります。
気になる変化があった場合は、お薬を中止する前に処方医や薬剤師へご相談ください。
妊娠以外で生理が止まる 「続発性(ぞくはつせい)無月経」とは?

これまで順調にあった生理が、妊娠以外の理由で3か月以上来なくなる状態を 「続発性無月経」といいます。
続発性無月経の多くは 、女性ホルモンの分泌バランスが崩れることで起こります。
女性ホルモンには、主に以下の2種類があります。
- エストロゲン(卵胞ホルモン): 生理周期の排卵前に多く分泌され、子宮の内膜を厚くする
- プロゲステロン(黄体ホルモン): 排卵後に分泌され、子宮の内膜を維持して妊娠に備える
続発性無月経は、黄体ホルモン薬を投与(プロゲステロン試験)したあとの出血の度合いによって「第一度無月経」と「第二度無月経」に区別されます。
これらのホルモンのバランスが崩れることで、生理が止まってしまうことがあります。
では、生理が来ない状態を放置すると、体にはどのような影響があるのでしょうか。
続発性無月経を放置するとどうなる?
無月経を放置すると、子宮や骨の健康に影響を及ぼす可能性があります。
特に注意したいのが、
- 子宮体がん(子宮内膜がん)のリスク上昇
- 骨量低下による骨折リスクの増加
の2つです。
リスク①:子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが高まる
排卵がうまく起こらないと、プロゲステロン(黄体ホルモン)が十分に分泌されず、エストロゲンだけが子宮内膜に作用し続けること(unopposed estrogen)があります。
本来であれば生理によって剥がれ落ちるはずの子宮内膜が厚いまま残り続けることで、不正出血や子宮内膜増殖症、将来的な子宮体がんのリスクにつながることがあります。
これを分かりやすく「パンケーキ」に例えてみましょう。
エストロゲンによって子宮の「内膜」という生地がどんどん厚く積み重なっているのに、生地をこんがりと焼くプロゲステロンが来ないため、生地がうまくお皿にひっくり返りません(=生理として剥がれ落ちない)。
内膜が厚い状態のまま長期間放置されると、だらだらとした不正出血を引き起こすだけでなく、将来的に「子宮内膜増殖症」や「子宮体がん(子宮内膜がん)」を発症するリスクを高めてしまいます。
リスク②:骨がもろくなり、将来の骨折リスクが高まる
一方で、エストロゲン自体が不足するタイプの無月経もあります。
エストロゲンには「骨を守る(骨がスカスカになるのを防ぐ)」という大切な役割があります。
そのため、エストロゲンが少ない状態が続くと、若い年代でも骨量が減少し、運動による疲労骨折や将来的な骨粗しょう症などのリスクが高まることがあります。
特に「運動を頑張る女性」や「思春期の方」へ

部活動やスポーツを一生懸命頑張っている方の中で、
「以前より出血量が減った」
「生理の間隔が長くなった」
「生理が止まってしまった」
ということはありませんか?
その変化は、運動量に対して食事量が足りておらず、「生きるためのエネルギーが最優先され、月経にまわすエネルギーが不足している」という体からのサインかもしれません。
私たちの体は、生命維持に必要な機能を優先するため、エネルギーが不足すると月経機能が後回しになることがあります。
特に思春期は、「生涯の骨量を蓄えるための一番大切な時期」です。
一般的に骨量は20歳頃までに大きく増加し、この時期に十分な骨量を獲得できるかどうかが将来の骨の健康に影響すると考えられています。
まとめ:自分の体を長く守るために
生理が3か月以上来ていない 状態は、決して「楽でラッキーな状態」ではありません。
- 子宮の内膜が厚くなり続けて、がんのリスクにさらされているかもしれない
- エストロゲンが不足して、骨がどんどんもろくなっているかもしれない
など、さまざまな リスクが隠れている可能性があります。
自分の大切な体を長く守るため、そして将来の妊娠のためにも、「いつもと違うな」「生理が来ないな」 と感じたら、そのまま放置せず、婦人科の受診を検討しましょう。
お薬の影響が気になる場合や受診先に迷う場合は、医師や薬剤師へお気軽にご相談ください。
【参考文献】
産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編 2023
女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2025年版
病気がみえるvol.9 婦人科・乳腺外科


