【現役薬剤師が解説】災害時のお薬の備えと防災リュックに入れる市販薬の選び方

みなさんは、ご自宅の防災リュックや非常持ち出し袋の中に、「お薬」の備えはできていますか?
水や非常食、懐中電灯などは準備できていても、お薬の備えまでは手が回っていないという方も少なくありません。

しかし、地震や豪雨などの大規模な災害が発生すると、病院や薬局が被災したり、停電や物流の影響で、普段どおりにお薬を受け取れなくなる可能性があります。 

いざという時に慌てないためには、日頃から「お薬の備え」をしておくことが大切です。 

今回は、災害時に想定される医療機関や薬局の状況と、防災リュックに備えておきたい市販薬の選び方、「今日から始められるお薬の防災対策」について、現役薬剤師の視点からわかりやすくご紹介します。 

薬局でも「防災リュックにはどんなお薬を入れておけばいいですか?」というご相談をいただくことがありますが、実は少し準備を工夫するだけで、災害時の安心感は大きく変わります。

災害が起きたとき、病院や薬局はどうなる?

大きな地震や豪雨などの災害が発生すると、 普段どおりに受診やお薬の受け取りができない可能性があります。 

病院や薬局自体が被災したり、停電や断水によってシステムが停止したり、物流が滞って医薬品が届かなくなったりすることがあるためです。  

地域の被害状況にもよりますが、医療機関や薬局が通常通り営業できるようになるまでには、数日から長ければ1週間近くかかるケースもあります。
そのため、「災害が発生してすぐは、いつも処方されているお薬が手に入らない可能性がある」というリスクを、あらかじめ想定して備えておくことが大切です。

実際に災害時は、医療機関も被災者の対応を優先するため、普段のようにすぐ受診・調剤できるとは限りません。
「数日間は自分で備える」という意識を持っておくことが安心につながります。 

防災リュックに入れる「市販薬」を選ぶ3つのコツ

災害時は、病院や薬局がすぐに利用できない可能性があります。
そのため、 防災リュックには数日間を安心して過ごすための 市販薬を備えておくことをおすすめします。

ただし、普段使うお薬をそのまま入れればよいというわけではありません。
災害時ならではの環境を考えながら準備することが大切です。
準備する際のコツは以下の3点です。

1. 水なしで飲めるお薬(OD錠など)を選ぶ

災害時は断水などにより、水が思うように使えないことがあります。
水が非常に貴重になり、飲み薬を服用するための水を十分に確保できない場面も想定されるでしょう。 

そんなときに役立つのが、 水なしで服用できる市販薬や「OD錠(口腔内崩壊錠)」です。
OD錠は口の中に入れると唾液でサッと溶けて飲み込めるお薬です。
パッケージにある「水なしで飲める」「OD錠」といった表記を目印に選ぶとよいでしょう。

2. 避難生活で起こりやすい 体調変化を想定する

避難所での生活は、慣れない環境やストレス、睡眠不足などが重なり、体調を崩しやすくなります。
普段は気にならない不調でも、災害時には症状が出やすくなることがあります。

例えば、以下のようなお薬を備えておくと安心です。

  • 風邪薬・胃腸薬・整腸薬・便秘薬:環境変化による体調不良に備えるため
  • 湿布(外用鎮痛消炎薬):いつもと違う慣れない姿勢での生活による肩こり・腰痛や、軽い怪我への対応
  • ビタミン剤:避難生活での栄養バランスの乱れによる 口内炎などの予防(錠剤タイプ、お子さまの場合は栄養強化型のジュース・お菓子など)

ご自身やご家族が「避難生活でどのような不調が起こりそうか」をイメージしながら準備することがポイントです。

また、お子様の急な発熱や体調不良は、 医療機関への受診が基本です。
そのうえで、基礎疾患のないお子様の場合は、軽い風邪症状などに対応できる市販薬をあらかじめ確認しておくと安心です。
特に、お子様の発熱や痛みに対応できる「アセトアミノフェン」は備えておくと役立つでしょう。

避難生活では、普段なら気にならない軽い頭痛や胃の不調でも、ストレスや疲労が重なることでつらく感じることがあります。
「もしも」のときに備えて、ご家庭に合ったお薬を準備しておくと安心です。 

3. 「ローリングストック」で有効期限切れを防ぐ

せっかく防災リュックへお薬を準備しても、「何年も開けておらず、有効期限が切れていた」というケースは決して珍しくありません。 

お薬にも食品と同様に使用期限が存在します。
期限切れを防ぐためには、「ローリングストック」という管理方法がおすすめです。

普段から使う市販薬を少し多めに備えておき、期限が近いものから日常生活で使用します。
そして、使った分だけ新しく買い足すことで、常に新しいお薬を備蓄できます。 

薬局でも、有効期限が切れたお薬を「まだ飲めますか?」とご相談いただくことがあります。
防災用のお薬も定期的に見直す習慣をつけておくと、いざという時にも安心です。 

持病がある方は「飲み合わせ」に注意が必要

普段から病院で処方された持病のお薬(持参薬)を服用している方は、市販薬選びに特に注意が必要です。

一番気をつけたいのが、「処方薬と市販薬の飲み合わせ」です。
お薬の組み合わせによっては、お薬の効果が強く出すぎてしまったり、反対に十分な効果が得られなくなったりする場合があります。

そのため、持病のある方は、市販薬を自己判断で選ぶのではなく、ご自身の処方薬に合わせた「自分専用の防災お薬セット」を準備しておくのがおすすめです。

薬局では、「防災リュックにはどんな市販薬を入れておけば安心ですか?」というご相談をいただくことがあります。
薬剤師は、処方薬との飲み合わせや、ご本人・ご家族の体調に合わせたお薬選びのお手伝いができます。 

ご自身だけで判断せず、処方箋を薬局に持っていくときなどに、お気軽に「防災リュックにどのような市販薬を備えておくとよいですか?」と薬剤師へご相談ください。

災害時の命綱になる「お薬手帳」の備え

災害時に自宅へお薬を取りに戻れなかったり、避難の際にお薬そのものを失ってしまった場合でも、「お薬手帳」の情報があれば大きな助けになります。

救護所などで医師や薬剤師へ「現在服用しているお薬」を正確に伝えられるためです。
仮に同じお薬が避難所や近隣の医療機関になかったとしても、お薬手帳の情報をもとに、同じような作用を持つ代替薬を検討し、必要な治療につなげられる可能性があります。 

いざという時に備えて、次のような準備をしておくことをおすすめします。 

  • お薬手帳の定期処方+最新のページのコピーを取り、防災リュックに入れておく
    (かかりつけの医療機関がすべて把握できると安心です)
  • スマートフォンのカメラで最新のお薬手帳(または処方内容がわかる明細)を撮影しておく
  • 電子お薬手帳アプリを活用してスマートフォン内にデータを保存しておく
  • お子様の体重を定期的に測り記録しておく(お薬の量の判断に必要な情報です)

紙・スマートフォン・電子お薬手帳など、複数の方法で情報を残しておくと、万が一の際にも安心です。 

まとめ

災害は、いつどこで起こるかわかりません。
だからこそ、普段から少しずつ備えておくことが、ご自身や大切なご家族の安心につながります。

防災リュックのお薬を準備する際は、次のポイントを意識してみましょう。

  1. 水なしで飲めるお薬(OD錠など)を選ぶ
  2. 避難生活で起こりやすい体調変化を想定して備える
  3. ローリングストックを活用し、期限切れを防ぐ
  4. 持病がある方は、処方薬との飲み合わせを薬剤師に相談する 
  5. お薬手帳のコピーや写真、電子お薬手帳などで服薬情報を残しておく 

これらはどれも特別な準備ではなく、 今日からでも始められる対策ばかりです。
この機会に、防災リュックの中身とあわせて、お薬の備えについても見直してみてはいかがでしょうか。 

「どんな市販薬を準備すればいいかわからない」「持病の薬と飲み合わせても大丈夫?」など、不安なことがありましたら、お気軽にメディック太陽グループの薬剤師までご相談ください。

災害時にも安心して過ごせるよう、私たち薬剤師が日頃の備えをサポートいたします。